サクサクの衣にプリプリの海老、甘辛いタレがじんわり染みるご飯——
名古屋・清水の老舗「光村」のかき揚げ丼は、地元では昔から親しまれてきました。
そんな絶品丼に、とある野球界のレジェンドが静かに想いを寄せていたこと、ご存じですか?
実はあの長嶋茂雄さんが、このかき揚げ丼を「勝ちあげ丼」と名付けて、勝利のゲン担ぎとして大切にしていたんです。
来店こそなかったものの、店主に届けられた直筆のサインには、料理への感謝と、心の交流がしっかりと刻まれていました。
今回は、そんな“ミスター”と「光村」の知られざる物語を、丼の香ばしい湯気と一緒にお届けします。
プロ野球界の“ミスター”に捧ぐ、一杯の記憶
2025年6月3日、プロ野球界の象徴ともいえる存在、長嶋茂雄さんが惜しまれつつ89歳で永眠されました。
闘志を燃やしながらグラウンドに立ち続け、時代を牽引したその姿は、今もなお多くの人々の記憶に焼き付いています。
そんな“ミスター”が、ひときわ愛した一杯の丼があることをご存じでしょうか。
それが、名古屋・北区清水にある老舗天ぷら店「光村」の名物、かき揚げ丼。
長嶋さんはこの一杯を「勝ちあげ丼」と呼び、名古屋遠征時の“勝利のゲン担ぎ”として大切にしていたというエピソードがありました。
“勝ちあげ丼”の由来と願い
通常「かき揚げ丼」として提供されるこのメニューは、ぷりぷりの海老だけを贅沢に使い、サクッと香ばしく揚げられたかき揚げが、艶やかなタレご飯の上にどっしりとのった逸品。
そこに、「勝ち上がる=試合に勝つ」という願いを込めて、“ミスター”は「勝ちあげ丼」と命名。
名古屋での試合があると、この丼を食べていたそうです。
「これを食べると勝てる気がする」——長嶋さんがそう思っていたのでしょうか。
試合に挑む前のルーティンとして、この一杯に特別な意味を見いだしていたようです。
来店は叶わずとも、心は通っていた
実は、長嶋さんは「光村」を一度も来店したことがありませんでした。
しかしその想いは形になり、直筆のサイン色紙が店に届いたのです。
「本当に気に入ってくださっていたんだ」と話すのは、現店主・水谷浩三さん。当時は信じられなかったものの、確かに“あの字”が書かれていたといいます。その色紙は今も店内に大切に飾られ、“ミスター”が残してくれた唯一無二のメッセージとして、訪れる人々の目を引いています。
是非来店してサインを拝みたいですね。
光村のかき揚げ丼の魅力
「光村」は1973年に創業し、50年以上にわたって名古屋で愛され続ける天ぷらの名店です。
その看板メニューが、海老だけで仕上げた特製かき揚げ丼。
しっかりと火を通しながらも、サクッと軽く仕上げる職人技に脱帽です。
30年以上継ぎ足された秘伝のタレは濃すぎず、海老の旨味を引き立てる絶妙な味わい。
油切れの良さもあり、丼ものながら最後まで重たさを感じさせないのが特徴です。
メニューには、海老が2倍の「スペシャルかき揚げ丼」や、天ぷらの盛り合わせを追加した「添えもの丼」もあり、常連や観光客にも人気。まさに、長嶋さんの勝負メシにふさわしいラインナップが揃っています。
店舗情報
- 店名:天ぷら 光村(みつむら)
- 住所:愛知県名古屋市北区清水3丁目19-18
- 電話:052-911-3512
- 営業時間:11:00~14:00 / 17:00~21:00(L.O. 各30分前)
- 定休日:水曜日・第1・第3火曜日
- アクセス:名鉄瀬戸線「清水駅」から徒歩約4分
- 公式サイト:https://tp-mitsumura.com/
まとめ:記憶に残る“勝負飯”を、いま味わう
勝利にこだわった名将が心から愛したのは、
派手なグルメではなく、職人が誠実に仕上げた一杯のかき揚げ丼でした。
来店こそなかったものの、“勝ちあげ丼”を通じて交わされた心の交流は、今も「光村」の味とともに生き続けています。
コメント